ラムセバンド(スウェーデン)

★スウェーデンの音楽療法について★2003年4月5日
      ビルギッタ ストロンベク先生  ヘレナ ワットストロム先生
      スウェーデン パーティル市 オイエルシェ学校


スウェーデンでは、障害をもつ子どもは、かつては養護学校や障害児だけの学級に通っていました。
今、特別な援助を必要とする子どもは、普通学校の中で、多くの友達と一緒に学び、1人ひとりのニーズに応じた個別の教育を受けることができるようになりました。
スウェーデンのヨーテボリの近く、パーティルの町では統合教育やインクルージョンの考え方がすすんでおり、音楽による療育活動も活発です。知的な障害をもつ子どもにヴァイオリン演奏は難しいと考えられてきましたが、音楽の専門の先生と障害児教育の先生が、研究・工夫をして、何年もかかって演奏が可能になりました。ヴァイオリンバンド「ラムセバンド」を結成し、演奏会も開いて、家族だけでなく、多くの人に喜びを与え、子どもたちも強い自信を得ることができました。
昨年、日本で初めてのコンサートを神戸で開き、おおきな感動をよびました。今年も多くの人に聞いてもらいたいと思い、コンサートとレクチャーを開催します。音楽を通じてスウェーデンと日本の人々の友好を深めたいと思います。

 


私は子供の頃にヴァイオリンを習っていたので、先生方のお話の内容(工夫)がとてもよく分かったので、深い感銘を受けました。

 

先生方の工夫を一部ご紹介します。

 

①ヴァイオリンにはG線・D線・A線・E線の4本の絃があります。4本の絃の指で押さえる部分の下に4色(G線は、D線は、A線は、E線は)のテープを貼り、カラーで絃が分かるようにしました。

 

②弦に、その文字から始まる、男の子や女の子の名前をつけました。(イラストもある)
  G線 (の服を着た男の子)  グスタフ
  D線 (い服を着た男の子)  デヴィッド
  A線 (い服を着た女の子)  アンナ
  E線 (い服を着た女の子)  エバ


③画用紙に絃と同じ色のアルファベットを書いて(色・シンボル・数字の組み合わせ)楽譜を作りました。
楽譜の例  

DD AA EE 
 ↓↓↓
(D線)を2回、(A線)を2回、(E線)を2回弾きます。いずれも指は押さえません。

ヴァイオリンの譜面の読み方

 押さえない(開放弦) → 0
 人さし指で押さえる → 1
 中指で押さえる   → 2

 薬指で押さえる   → 3
 小指で押さえる   → 4
鍵盤のように決まった位置がないので、押さえる場所がずれれば、音がずれます。

 例えばA線の0(開放弦) → ラ
    A線の1 → シ

 

私が演奏を聴いてとても驚いたのは、ピアノ伴奏と主旋律を弾く人がいれば、0(開放弦)だけを弾く人が大勢いても合奏が成立するということです。(0の場合は、正しく調弦されていれば音はずれません)

④指を押さえる場合の工夫

楽譜の例  

02 00 02 00
 ↓↓↓
(G線)の0、2、(D線)の0、0、0、2 (G線)の0、0
 ↓↓↓
この譜面は、ソ シ レ レ レ ファ ソ ソ となります。


⑤弓の練習→トイレットペーパーの芯を利用して、芯の中に弓を通し、同じ位置で弓を上下させる


【レクチャーより】

・歌うことが出来る曲を選ぶ。児童が好きな曲を選ぶ。
・いつも子どもの注意を引くようにする。
・ゆっくり練習をする。日本の鈴木方式を参考にした。
・ラムセバンドの練習は週2回。
・家庭での練習は無し。(ソリストは別)
・メロディーと伴奏に分ける。
・毎回繰り返す。毎回同じ手順を踏まえることが知的障害児には大切。
・弦を押す指の練習を長期間にわたってした。
・正しい絃を押さえるのが難しかった。
・同時に始め、同時に終わるのが難しかった。
・教師に忍耐が必要。

・ソロのパートを持つ → 自分にも出来るという自信がつく。

・それぞれの子供のレベルを知りそこから進歩することが大切。
・いつも正しい音符でなくて良い → 愉しむことが大切。
・音楽は全ての人が同じ価値を持っているということを教えてくれる。
・完璧を目指すより、楽しむことを目指す。
・不可能なものはない。
・何が出来るかを焦点として見る。出来ないことを見るのではない。
・実例を作り上げる → 他人の目がゆっくりでも変わる。「こんなことが出来るんだな…」
・障害を持つ子どもの親になることはノープロブレム。社会に対するギフト。いろんな経験が出来る。
・みんなで社会を変える。

 

 

コンサートの時には有香(当時3才)を託児に預けました。
買って帰ったラムセバンドのCDを聴かせると、何か琴線に触れるものがあったようで、それまでに見たことがない程興奮して長い間踊っていました。
託児に預けずにコンサートに参加させてあげれば良かった…と、残念に思いました。